室町時代の後半に登場した東山文化の八代将軍足利義政は、香を愛で芸道としての体系作りの祖となりました。
そして、公家の三條西実隆公を祖とする「御家流」、
武家の志野宗信を祖とする「志野流」の二大流派が誕生しました。
「御家流」の特色は、華麗な蒔絵の香道具に、伸びやかで闊達な手前作法で、
香りや雰囲気を楽しむところにあり貴族や公家の流派です。
一方の「志野流」は木地の香道具に、簡素ながらにも厳しい、精神鍛錬のための武家の流派です。
この2つの流派が香道文化を継承発展させていきます。
「香道」は、昔の平安時代に貴族たちが優雅な生活文化として香を位置づけたことを継承し、
日本人の四季への感性や文学詩歌と深く結びつけ体系化した世界に類のない香りの芸道です。
「香道」の所作は“静”ですが、その優雅な静かさの中には、千年余にわたる歴史の重みと、非常に高度な感性が秘められています。人間の五感のなかでも、嗅覚を主役にした「香道」は、まさに日本人ならではの繊細な感性が生み出したものといえるでしょう。
十五世紀の終わりごろに流行した、2種類の香の良否を比べる香合よりも一歩前進したもので、文学的なテーマが多く、香の異同を確かめながら聞くことによってそれを解釈していきます。
テーマより使用する香の数や遊び方も異なり、組香者や香元の各々がその一つのテーマを理解して楽しむことで香席が成立します。
組香は室町時代に始まり、戦国から桃山時代にかけて複数の様式に発展し、江戸時代勅撰にいたり家元制が発足する頃頂点に達して数百に及びました。 今日でも一番よく行われている遊びです。
代表的な組香には「源氏香」、七夕の伝説をテーマにした「七夕香」や「星合香」、古今和歌集の歌を題材にしたものなど興味深いものが多数あります。
香元がその日味わう香木をいくつか用意し任意の順で一つずつ聞香炉でたき、連衆に回していきます。
連衆は代わる代わるその香りを聞いていき、各々でその香りを記憶にとどめます。
最後に香元が実際にたいた順を読み上げ、自身の記録した順と照らし合わせ、成績をつけます。
5種類の香を5本の縦線であらわし、たかれていく香を聞きながらそのうち同じ香があれば線の頭を横線で結び、正解数を競います。
回答の可能性が52通りとなり、この数から源氏五四帖を連想し、その初巻である「桐壷」と最終巻である「夢の浮橋」を除き、各巻に図柄をあてはめたのが源氏香之図です。
52の香図と源氏物語の巻の内容は必ずしも紐づいておらず、初めに関係があると思われたところの他は適当に割り当てたものと言われているようですが、香図を書きながら自分の聞きがどの名目であるのや、各巻の内容と合わせて想像することが組香の楽しみの一つです。