COLUMN

• 今から1300年以上も前の685年、
  「古事記」や「日本書紀」の編纂でも知られる天武天皇が
  『諸国の家ごとに仏舎(ほとけのみや)を作り、すなわち
  仏像と経を置きて礼拝供養せよ』と詔(みことのり)を
  発せられたそうです。
  私達のくらしに根づいた祈りの習慣は、そんな遥か昔から
  脈々と受け継がれてきたものなのですね。
• 暑さ寒さも彼岸まで〟とはよく言ったもので、
  春のお彼岸の頃は、日増しにあたたかく、おだやかな季節に。
  春を歓ぶ気持ちが強いほどに、〝今こうしてあること〟の
  有難みが実感されて、それがご先祖様に対する感謝にも
  つながっていく･･･お彼岸って、自然な心の流れなのですね。
  そんな気持ちを託すお線香の香りです。
• 夏を告げる雷の音･･･。
  昔は、雷が鳴ったら、蚊帳を吊り、お線香を立てて、
  その中で小さくなっていた ー なんて話をききます。
  お線香の香りは気持ちを落ち着かせますし、お部屋の
  空気もさわやかにします･･･。これも先人の知恵ですね。
  受け継がれゆく、心豊かな暮らしの習慣です。
• ふるさとの「お盆」 ―。
  朝のうちに盆棚をつくり、きゅうり馬になす牛、
  盆提灯を飾って、季節の花々と野菜・果物もお供えしたら、
  夕方には迎え火を焚いて、ご先祖様をお迎えします。
  大切に受け継がれてきた、美しい日本の心とカタチ。
  お線香もそのひとつですね。
• お盆に、ご先祖様を送り迎えする乗り物は
  精霊馬（しょうりょううま）と言われています。
  きゅうりで作られたものが馬、なすで作られたものが牛です。
  馬には「早くおいでください。」、牛には「ゆっくり
  お帰りください。」という思いが込められています。
  ご先祖様の〝里帰り〟、大切なお盆です。
• 「秋分の日」 ―。
  「国民の祝日に関する法律」に〝祖先を敬い、
  亡くなった人々を偲ぶ〟とあるように、
  お線香とお花をもって、お墓参りにいく日です。
  秋空の下、ご先祖様へのご供養を通じて 肌で感じる、
  自分たちが今こうしてあることの〈有難さ〉･･･。
  そんな日本の美しい習慣に香り立つ、お線香です。
• 秋の野で ひときわ目を惹く真紅の花、
  仏教では伝説上の“天界の花”と尊ばれる「曼珠沙華」。
  お墓参りの道すがら、よく見かけることから
  「彼岸花」の呼び名が しっくりくる方も多いでしょう。
  さわやかな季節を迎えた歓びと共に、ご先祖様を敬い、
  懐かしい方々を偲ぶ･･･。
  大切に受け継いでいきたい日本の〈心〉･･･。
• 年の瀬の必需品や
  お正月のお飾りを商う「歳の市」(年の市）･･･
  今では懐かしい、冬の風物詩といえますね。
  『年の市 線香買いに 出でばやな』と、 芭蕉の句にも
  あるように、昔からお線香はこの時季の必需品。
  いつもより念入りにお仏壇を磨き上げ、香りの良い
  お線香も買い揃えて、新しい年を迎えたいものですね。
• 〝去年・今年〟と書いて
  「去年今年（こぞことし）」と読む、
  冬の季語があります。
  年が明ければ今年は去年に、来年は今年になる・・・
  そんな慌ただしい時の流れを感慨深く表した言葉だそうです。
  でも、そういう年の瀬こそ落ち着きが肝心。
  まずは穏やかな朝の香りから、いい一日を始めましょう。
• ４月は、〝お日様の光に恵まれる月〟の意味から、
  太陽の「陽」の字がつく
  〈正陽（せいよう）・純陽（じゅんよう）・
  六陽（りくよう）〉等の呼び名もあるそうです。
  明るい陽射しの呼びかけに、様々な生命が輝きを増す春･･･。
  そんな季節の実感を、ふんわりとお線香の香りが
  気づかせてくれますね。