2016年 日本香堂 ご愛用者謝恩観劇会 特別座談会2016年7月28日

顧客満足から社会的責任へ-
進化を重ねる40年目の文化事業

日本香堂が毎年5月の恒例でお届けしています「ご愛用者謝恩観劇会」―。
1977年のスタートから数えて第40回の節目に当たる今年、直前に発生した熊本地震の影響により熊本・大分2会場の公演中止を余儀なくされるも、座長の水谷八重子さんはじめ出演者のみなさんの熱演によって、全国18会場(19公演)いずれも連日満員御礼の大盛況をいただきました。
いよいよ千穐楽を迎えた大阪・国立文楽劇場、昼夜2回公演の間隙を縫って、ご出演の水谷八重子さん・若林豪さん・内海光司さん・麻丘めぐみさんに、今回の巡演を振り返っての想いや舞台裏のエピソード等、大いに語っていただきました。
〈インタビュアー:㈱日本香堂 代表取締役社長 小仲正克〉

※本文、写真共、転載不可

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出演者の胸に響いた 被災地支援の志

小仲    約1ヶ月にわたる巡回公演もお蔭様で本日、千穐楽を迎えることができました。あとは夜の部を残すだけですが、ここまで乗り切ってこられた皆さんの、今のご心境からお聞かせ願えますか。

水谷     九州であれほど大きな災害があって2会場が中止になったのは残念でしたが、こうして無事に千穐楽を迎えられて…。全会場での物販の売上を被災地に全額寄付されると伺って、何が何でもいいお芝居をしなきゃと、みんな気を張って演じてきましたから。

若林     どこの会場でもお客様みなさん大変喜んでくださって、ありがたかったし、楽しかったですね。本が難しくて最後まで覚えきれなかったんですが(笑)、そこはお姉さまに助けていただいて本当に楽しかったです。

水谷     いえいえ、こちらこそ助けていただきまして(笑)。若いお2人はどうだったの?

内海     大阪でのお稽古の時から皆さんと和気藹々とやらせていただいて、あっという間でしたね今日まで。各地の美味しいものもたくさん楽しめましたし、普段なかなか行けない地方のファンの方々とも交流が持てたのは嬉しかったですね。

麻丘     実は私、大分県出身で、地元でお芝居がかかるのも少ないもんですから、今回は親戚一同すごく楽しみにしてくれていたんで、(公演中止は)ちょっと残念でしたが、初日の宮崎でお客様がボンボン笑ってくださったのには、もうビックリ。私と同じで九州人はやっぱり熱いなぁって思っていたら、その後どの会場でもボンボンと…。あぁ、これは日本香堂のお客様が優しいんだと…。本当に優しいお客様ばかりで。

若林     僕も九州出身で、実家が長崎にありまして。今回の移動の合間に何年かぶりに帰ったんですよ。両親ともすでに他界していて、親父の時は間に合ったんですが、お袋の最期には立ち会えなくて…。そのこと今でも怒ってるかなぁって思いながら仏壇の前に座ると、お線香のいい匂いが漂ってきて…、不覚にも涙がポロリとね。何だかお袋が許してくれた気がして…。よかったなぁ、これも日本香堂さんの舞台に出てるお蔭かなぁと。

小仲     私共にとっても嬉しいお話ですね。ご披露いただき、ありがとうございます。

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観劇会の新境地拓く 「風刺喜劇」への挑戦

小仲    ところで、今回の演目『愛のお荷物』は、日本映画界の鬼才・川島雄三監督の作品を舞台化したもので、政治的な題材も絡めた風刺喜劇という、私共でも初めてのジャンルとなりましたが、皆さんここまで演じてこられていかがでしたか。

水谷    どなたが企画なさったのか、昭和30年当時の「受胎調節」政策なんて少子化に悩む今とは全く正反対のテーマを取り上げながら、それに関わる政治家の狼狽ぶりと一般庶民の無頓着さは現代にも通じる、というか、まさに今という時代を映し出しているようで…。いい作品を選ばれましたね。

麻丘    私がちょうど生まれた頃の社会事情ってこんなだったのかって興味深かったです。

水谷    川島監督とは生前、随分お仕事させていただいたんで、川島作品のお芝居を演じられるなんて感慨無量で…。しかも日本香堂さんの舞台では初めての新作。

若林    へぇ、新作は初めてでしたか。

水谷    えぇ。それにしてはお稽古期間が短すぎるって怖さもありましたけれど、逆に毎日毎日お客様の前で演じて教えていただきながらって感じが新鮮でしたね。

若林    考えてもいなかったところがウケたり、逆に狙っていたところが全然ウケなかったり。ここはこんなにしんみりと聞いてくださるのか、こんなに笑ってもらえるのかと、舞台に立って初めてわかりますよねぇ。

小仲    客席との駆け引きから流れをつくってこられたと。

若林    まぁ、何かやってウケるとさらに突っ込んでいっちゃう、これは役者の性ですね。

内海    豪さんならではです。

若林     いや違う、内海くんはもうひどいもんです。父と子の掛け合いシーンで、ウケるとなるとドンドン突っ込んでくるんですよ。

内海     僕は台本通り、お稽古通りです、ハイ(笑)。

小仲     内海さんは本当に軽妙というか、今回の役どころも…。

内海      はい、素敵な両親と、素敵な…。

麻丘      なんでそこで下向くの?

内海      …素敵な奥さん。それと妹に囲まれながら、家族愛っていうですかね、やっぱりいいですよね家族って。奥さんの尻に敷かれてはいますけど。

麻丘      ひどーい。私はいつもテキパキとしている議員秘書が、愛する人と一緒の時は本当に可愛らしい女性へと変貌するように、自分でもちょっと気持ち悪いかなぁと思うぐらいに思いっきり落差をつけて演じてきたつもりなのに。

小仲     お客様の反応は上々でしたよ。

麻丘     ありがとうございます。ここは役者としての勉強のしどころだと思って毎日いろいろ考えながら…それが楽しかったです。

水谷     私が今回の役で一番難しかったのは“つわり”で。

若林     うーん、普通にやっても面白くないし、オーバーにするとおかしいし、その根っ子をほじくり出すのがねぇ。

水谷   それで飼い猫について勉強させてもらって。ほら、猫って年中ゲベっゲベって毛玉を吐いてるでしょ。

麻丘     なるほどねぇ(笑)。

若林     僕は最初、代議士の役ということで田中角栄節で『それは君、違うんだよ』なんて演ろうかなとも思ったんだけど。ただでさえ台詞が難しいのに、これは到底無理かなと。

内海     それ、見てみたかったなぁ。

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一座の和を育みながら 元気を届けたバスの旅

小仲     皆さん、舞台でのご苦心もいろいろと…さらに私共の観劇会ならではのバスでの長距離移動というご苦労もいただきまして。

若林      いやぁ1日1回公演ですから大変よかったですよ、今日だけは2回公演ですけど。だいたい旅公演って日に2回というのが多いんです。

内海     まだ明るいうちに移動できて。

若林     それがいいんだな、バスの窓から眺めるその土地々々の風景が。

水谷     何だかあちこちでご馳走いただているみたいな。

若林     ホント、何よりの贅沢。内海くんもずいぶんバス旅を満喫していたようで。

内海     非常に快適でしたね。荷物とか全部車内に積みっ放しで、自分の部屋みたいにして。

水谷  マイカーね。

内海     そう、マイカー。僕も結構、旅公演やらしてもらってますが、今回ほど楽しいツアーはなかったですね。麻丘さんお手製の野菜ジュースとサラダも毎朝いただけたし。

水谷  そうそう、朝食お母さんしてくださって。

麻丘  自分の健康管理もあって、近くのスーパーで買い物しては朝ホテルの部屋でちょこちょこっと。

若林     あれは助かりました。大変元気になりました。

麻丘  皆さんに喜んでもらって何よりです。でも元気をくれたといえば、毎日毎日のお客様が本当に温かくて。

若林     さぁ楽しんでやるぞって待ち構えておられて。

水谷  また第1部のバラエティショーで暁トリオさん達が劇場を温めてまくってくださった後ですから、すごく楽に出られましたしね。

小仲     例年そうなんですが、今年もお客様が前日からお並びの会場が幾つもありまして、本当にありがたいことです。中にはご友人か親戚の方か、1年ぶりに会場で会われて、来年も抽選当てて必ずここで会いましょうねと、まるで年中行事のように私共の観劇会をアテにしてくださっている…これも40年の積み重ねの賜物なんでしょうね。

水谷     そうやって待ち遠しく思われている日本香堂のお客様だから、一般の劇場とは反応が違うんでしょうね。

若林   待ってました!ってね。不謹慎に聞こえるかも知れないけど、あんな災害の後にこそ笑いによって元気を取り戻してもらって、大変いいことしたのかなぁと。

小仲     この観劇会もスタート当初は販売促進や顧客満足を目的にしていたと思うんですが、回を重ねていくうちに、それだけにとどまらず、お客様と演者の皆さん、私共主催者との絆がどんどん深まって、新型インフルエンザ騒動の年も何とか中止会場を最小限に抑えよう、東日本大震災以降は大いに笑って売上にもご協力いただいて被災地にエールを届けようと、現在のCSR(企業の社会的責任)のカタチにまで押し上げていただいたと実感しています。

若林     日本香堂さん、すごいなぁ。

小仲     いえいえ、まだ道半ばで…、まずは本日これから夜の部を有終の美で締め括っていただきまして(笑)。そろそろ支度の時間ですか? それでは皆さん、よろしくお願いいたします。舞台前のお忙しい中、本当にありがとうございました。

〈了〉

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「愛のお荷物」 あらすじ

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昭和三十年-。新木蘭子(水谷八重子)は、夫の厚生大臣である新木錠三郎(若林豪)との間に、三人の成人した子供を持つ主婦である。長女の和子(大原ゆう)は、荒牧家長男の荒牧章吾(都築謙次郎)と結婚して六年目になるがまだ子供はいない。長男の錠太郎(内海光司)は、電気機器を趣味にしているが、いずれ父の後を継がせ政治家にさせようと考えている。次女のさくら(西脇彩)は、名家の御曹司の出羽小路公磨(芦田昌太郎)と婚約を控えている。といった具合に「心配事はあるが幸せな生活」を平穏に送っていた。

ところがある日、蘭子は病院で山内医師から四十八歳にもなって突然、妊娠を告げられる。ショックを受け蘭子が家に帰ると、錠太郎は「恋人が妊娠したので結婚したい」と言い出した。しかも、その恋人は夫の秘書の五代冴子(麻丘めぐみ)だという。さくらは、そのことを知り、自分の結婚式の妨げになると思い猛反対。

そのうえマズいことに、錠三郎は、現在戦後ベビーブームで人口増加問題となっている中、このまま人口が増え続ければ土地も仕事も足りず経済は破綻すると、人口抑制のため「受胎調節相談所設置法案」という政策を打ち出している最中であった。このスキャンダルで夫の人口抑制政策に全く説得力がなくなるのは必定…。そんな中、とうとう蘭子は、自分の妊娠を夫に告げるのであった。

さてさて日本の人口増加問題、新木家問題はどうなることやら…。